CASE1

事例紹介

髙橋さんとご家族とチームの皆さん

第9期 金賞「自分でトイレに行きたい」100歳を超えても「やりたい」は叶う

~在宅で複数のサービスを活用した取組~

 入院により寝たきりとなった髙橋さん。一時は施設入居を考えながらも、家族は住み慣れた自宅で介護をすることを決意し、ベッドを導入し自宅に迎え入れました。髙橋さんも、自分を大事にしてくれる家族に迷惑をかけたくないため、「自分でトイレに行く」という強い思いがありました。訪問リハビリテーションによる機能訓練で座れる時間が長くなると通所介護を再開。夜間のトイレ介助をする家族の介護負担を減らすためにショートステイ(短期入所生活介護)も開始しました。そんななか100歳を迎えた髙橋さん。誕生祝いでの記念写真を見て「かつらがほしい」と希望したり、化粧をしたりするなどおしゃれへの意欲が芽生えたのです。これを好機ととらえ、チームはプロジェクト参加を決めました。
 訪問看護や訪問医、薬剤師が健康管理を行い、体調をチームで共有。訪問介護、通所介護でトイレ誘導をするとともに、「夜もトイレに行きたい」という髙橋さんの希望に沿って、ショートステイで夜間もトイレ誘導をすることにしました。加えて通所介護やショートステイで歌のレクリエーションや体操に楽しく参加するうちに体力がつき、おしゃれへの意欲もますます盛んに。次第に排泄リズムが整い、家族の負担も減っていったのです。その後、家族の体調などを考慮して特別養護老人ホームに入所しましたが、101歳の今もおしゃれを楽しみ、トイレに行くことができています。「互いに無理をせず暮らせたから今があります」と家族も笑顔で話してくださいました。

利⽤者情報

髙橋キクエさん(101歳)

要介護度
5→4
⽇常⽣活動作(ADL)
38→35

いくつになっても したい!×やりたい!を叶えたい!

 がんばる髙橋さんを支えたいという家族の思いに応えるため、チームがまとまりました。トイレに行けるようになるために通所介護などを利用することで、職員や他の利用者との交流が増えると、「おしゃれしたい」という新たな意欲が生まれました。化粧して髪を整え、服を選ぶ姿は家族も目を見張るほど。100歳を超えても「やりたい」ことは意欲向上につながり、チームで叶えられると感じています。

ご家族と談笑する髙橋さん

あうん介護センター(居宅介護支援)
主任介護支援専門員 福岡真理子さん

ご家族の精神的な負担に配慮しながらケアを組み立てました。同時に、高橋さんの意欲が低下しないように楽しみを持ち続けてもらいたいと考え、通所介護を提案しました。通所介護では好きな歌を歌い、自宅では『勉強しないと』と言って歌詞を書くほど意欲的です。短期入所生活介護では時折幻視があり不安を訴えることもあったので、部屋を変えてもらうなどして安心して過ごせるよう対応しました。高橋さんは、市制100年を迎えた川崎市と同い年。自宅近くの小学校に市制100年の旗があって、一緒に写真を撮ったそうです。100歳のお祝いも自宅に飾ってあり、家族から大切にされている実感があることも意欲につながったのだと思います。

しゅくがわら三清荘デイサービスセンター(通所介護)
管理者 杉山唯志さん

高橋さんは歌がお好きで、音楽レクは楽しんで参加されていました。特に『北国の春』は、送迎車の中でも歌うほど大好きでしたので、帰りの際は『北国の春』をみんなで歌って締めるなど、意欲を支援するよう心がけました。入浴後、お化粧されたり、髪を直されたりするのは意欲の表れ。職員も『キレイですね』『素敵ですね』などという言葉をかけて応援しました。高齢なので、入浴後は横になっていただくなど無理のないよう過ごしてもらうことにも気をつけています。通所介護利用者の中でも年長の高橋さんが元気に過ごされているのを見て、周りの方も『私もがんばらないと』と励まされています。職員も金賞受賞でさらなるモチベーションとなりました。

サクラサービス麻生営業所(福祉用具貸与)
福祉用具専門相談員 小嶋大輔さん

介護ベッドが生活の中心となるので、マットレスは高橋さんの状態に応じてさまざまなタイプのものを提供しました。退院直後は皮膚トラブルをケアしつつ体圧を分散するものを、ご自分で動けるようになってからは硬めのものというように変えています。車いすも使用していらっしゃいますが、家族が玄関から車いすで下りられるようスロープも自作するなど献身的で頭が下がります。福祉用具専門相談員は他の介護サービスよりは訪問の頻度が少ないですが、他職種とも連携しつつ、介護支援専門員には福祉用具の観点からどんなサポートができるか伝えました。また高齢なので体調が急に変わる可能性があります。そのため、介護支援専門員の要望には即日対応するようにしました。

特別養護老人ホームフレンド神木(短期入所生活介護)
介護職 西本千紗さん

利用を開始されたころはおむつだったのですが、『トイレに行きたい』という気持ちがあり、ポータブルトイレへの介助からはじめ、意欲が上ったので次は手すりにつかまりながらトイレに行ってもらうようにしました。100歳を機に補聴器の使用を始めたことで、職員や他利用者とコミュニケーションがとれるようになってからは友人も増え、職員とも信頼関係を築くことができ、さらに意欲が向上したようです。トイレに行けるようになっただけでなく、風呂も椅子のまま入れる機械浴から、椅子に座って浴槽を跨げるようになりました。また楽しんで過ごしていただける環境づくりにも注力。高橋さんは歌に合わせた体操に毎回参加され、しっかりと体を動かすことができるようになりました。

クスリのナカヤマ薬局登戸新町店(居宅療養管理指導)
在宅療養支援認定薬剤師 峯尾淳也さん

高橋さんの入院中から状況を把握するようにして、熱や痛みなど体調急変の兆候があればすぐに医師に知らせるようにしました。高橋さんは高齢ということもあり、嚥下に課題があります。『粉薬は飲みにくい』ということで服薬補助ゼリーを活用したり、『やはり錠剤がいい』と言われて錠剤を割って分包したりと、状況に合わせて解決法を見つけました。また家族の負担に配慮するという視点も欠かせません。薬を飲ませにくいと聞いて、水なしでも飲める薬を提案するなどしました。当薬局は地域に根差して信頼される薬局を目指しています。高橋さんは15年ほど前に担当しており、退院後在宅での療養も担当することになって地域包括ケアという面では理想的でした。これからはますますそうした患者さんが増えていくと考えられます。それぞれの患者さんの問題に多職種で連携して問題を解決していくことの重要性を改めて認識しました。

利⽤者の状況や
ケアの変化

R5.10
入院、全介助状態
要介護5
R5.11
退院、車いすへの移乗は全介助
訪問診療、訪問薬局など利用
R5.12
寝返り、起き上がり、端座位が可能に
R6.2
通所介護を再開。訪問リハビリは中止
R6.3
短期入所生活介護利用開始。
100歳のお祝いに「かつらがほしい」と言う
R6.5
補聴器の使用を開始。意思疎通が円滑に
R6.6
プロジェクト参加
R6.7
短期入所生活介護を増やす
R6.10
要介護4に改善
R7.1
排泄リズムが落ち着き家族の負担感が減少
R7.3
特別養護老人ホーム入所
R7.9
金の認証シール受賞