CASE3

事例紹介

※前列左から、玉虫智美さん、髙橋春枝さん(ご家族)、髙橋勝さん、森光子さん
後列左から、村上祐太さん、齋藤茂樹さん、和久井純さん、三神奈緒子さん、松永哲さん

大きく改善した1年、次の目標も見据えてチームで意思を統一
医療と介護の連携で、ついに目標を達成!

~在宅で複数のサービスを活用した取組~ 

嚥下機能向上を目標に設定

 第6期事例集のNew Case1取材以来1年ぶりにお会いした髙橋さんは、見違えるほどお元気そうです。この日は訪問歯科による嚥下検査。待望のかつ丼に挑戦です。
 髙橋さんは2年前、重症肺炎で入院し、嚥下機能が悪化して胃ろうを造設、施設入所を検討するほどでした。しかし髙橋さんには「かつ丼を食べたい」という強い思いがありました。そこで介護支援専門員は、嚥下機能を向上させることを目標にチームの意思を統一 しプロジェクトに臨んだのです。

定期的な嚥下検査を指標に

 福祉用具を導入し環境を整えた退院後は、訪問医の指導のもと訪問看護師がたん痰の吸引や胃ろうの管理を、通所介護では言語聴覚士が嚥下状態を見ながら食形態を工夫。発声練習や口腔体操も行いました。さらに通所介護や訪問リハビリでの個別機能訓練によって、筋力と体力が向上したのです。
 そこで訪問歯科による嚥下検査を実施。嚥下機能を向上させるために胃ろうを併用して栄養状態を改善し、体重を増やすようにという助言をチームで共有しました。その後も定期的に嚥下検査を行い、医療と介護が連携して嚥下機能向上のための取組を続けました。奥さまによる食事の工夫も奏功して体重も増加し、笑顔も多くみられるように。こうして嚥下機能のみならず全身の状態が大きく改善し、目標を達成したのです。
 長く少年野球の監督をしていた髙橋さん。再び地域コミュニティに戻ることを目指し、屋外での歩行訓練にも力を入れはじめています。

利⽤者情報

髙橋勝さん (77歳) 

要介護度
5→3
⽇常⽣活動作(ADL)
34→28

したい!やりたい!が叶った!目標達成の瞬間

 訪問歯科医が経鼻内視鏡を入れて、嚥下検査がスタート。奥さまやチームが見守る中、髙橋さんが念願のかつ丼を口に入れます。「誤嚥せずに食べることができています」と合格が出ると、チームから喜びの声が挙がりました。髙橋さんには、「うまい! 次は蕎麦屋さんのかつ丼が食べたいね」と余裕が伺えます。介護支援専門員も「あきらめずに皆で取り組んできてよかった」と笑顔がこぼれました。歯科医は、「長く、口から物をおいしく食べるためにも、今の良い状態を維持してほしい」と今後を見据えています。

利⽤者の状況や
ケアの変化

R4.1
重症肺炎で入院、人口呼吸器をつける
抜管後嚥下障害が残る
R4.3
要介護5
胃ろう造設
R4.5
胃ろうを併用しペースト食を開始
R4.6
退院後「かつ丼を食べたい」と希望
R4.7
退院。訪問看護、通所介護、
居宅療養管理指導(内科)を開始
プロジェクト参加
R4.9
嚥下内視鏡検査で、嚥下は悪く、
嚥下力向上のためのアドバイスをもらう
R4.12
通所介護での食事を完食できるように
R5.1
嚥下内視鏡検査で嚥下が改善傾向に
病状が悪化し入院~退院
R5.2
歩行が安定する
R5.3
要介護3に改善
R5.6
嚥下内視鏡検査。体重がもう少し増えたら
次回は検査でかつ丼にチャレンジとなる
R5.9
金の認証シール受賞
R5.11
嚥下内視鏡検査。かつ丼を食べる

桜寿園居宅介護支援センター
(居宅介護支援)
介護支援専門員 和久井純さん

髙橋さんの意欲を引き出し、生きがいを持って過ごしてほしいと考えました。最初の嚥下検査では訪問歯科に嚥下状態がどれだけ回復したかを確認してもらい、嚥下力アップのため体重を増やす、誤嚥予防のため介護ベッドで寝る時は水平にして仰向けという助言をもらいました。これをチームで共有して、胃ろうから栄養を入れて体重を増やすとともに、運動によって筋力をつけることに注力。以降、嚥下検査のたびに結果をチームで共有し、取り組みの効果を実感することができたのです。そして固形物が摂れるようになると笑顔が増え、好循環が生まれました。かつ丼を食べるという希望が実現し、あきらめずに皆で取り組んできてよかったと感慨無量です。

生協歯科クリニック
(居宅療養管理指導)
歯科医師 松永哲さん
歯科衛生士 三神奈緒子さん

目標達成に向けて指示したのは、胃ろうを併用して栄養を摂取し体重を増やすこと、喉の状態をよくすること、そして適切な食形態にすることです。また唾液でも誤嚥することはあるので、ベッドでの姿勢を水平にして仰向けにするよう助言しました。チームによる支援の結果、筋力と脂肪が増えて喉の収縮状況も改善しました。訪問医とは同法人に所属しているので、医師との連携もスムーズだったことも改善の要因だと思います。今回の嚥下検査では念願のかつ丼を食べることができましたが、今回だけ食べられればよいというわけではありません。口から、長くおいしく食べるためにも、今の良い状態を維持してほしいと思います。

協同ふじさきクリニック
(居宅療養管理指導)
クリニック看護師 森光子さん

誤嚥性肺炎のリスクが高かったため、医師が髙橋さんの全身状態を見ながら慎重に体調管理をしました。コロナ感染のためにレベルが落ちたこともあります。その際は、異常を素早く察知した奥さまの力で、悪化を防ぐことができました。髙橋さんを担当した当初は、口から食事をするのは難しいかもしれないと危ぶみましたが、見違えるように改善されました。表情も1年前とはまったく違っています。髙橋さんの意欲を尊重し、歯科医とも情報を共有しながら、髙橋さんがやりたいことと体の状態とをすり合わせていった結果が今日につながったのだと思っています。

指定訪問看護アットリハ八丁畷サテライトアットリハ鈴木町
(訪問看護・訪問リバビリ)
看護師 玉虫智美さん

医師の指示のもと、まずは体重を増やしていけるよう体調管理を行いました。そして同一事業所の理学療法士とも相談し、落ちていた筋力を少しでも補助できるよう取り組みました。訪問看護の際にも胃ろうまわりのケアのみならず、足のストレッチをしたり、室内歩行を促したりしたところ、髙橋さんのやる気が向上し、自主的に歩行訓練に取り組まれるようになったのです。歩行距離も伸び、座位も安定しています。

株式会社柴橋商会介護用品川崎営業所
(福祉用具貸与)
村上祐太さん

自立歩行ができるようになられたので、それまで使用していた屋外用の車いすのレンタルが終了しました。状態が低下していたときに役立っていた福祉用具が、髙橋さんの自立度やADLの向上とともに減っていったのは、福祉用具専門相談員冥利に尽きます。

トータルリハーブ藤崎
(通所介護)
管理者 齋藤茂樹さん

通所介護では、医師の指示のもと水分量を調節するとともに、髙橋さんの笑顔を引き出すようなコミュニケーションを心がけました。介護支援専門員を中心にチームで情報共有しながら、効果的なアプローチを追求した結果、口腔機能の改善にしたがって食形態も改善し、気持ちも上向きになられました。これはまさにチーム力のたまものだと思っています。今日の嚥下検査の結果も言語聴覚士にフィードバックし、機能訓練に生かしていくつもりです。

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