CASE

事例紹介

左から、片桐康子さん、鈴木佐映さん、三井麻琴さん、齊藤美佐子さん、片平正江さん

⼿の届く⽬標から最終⽬標へ
達成するごとに⾃信がつき、意欲も⾼まる

〜⼩規模多機能型居宅介護での取組〜

齊藤さんは第5期から続けてプロジェクトに参加し、「自宅から事業所まで歩く」を目標に歩行練習をしていました。第6期プロジェクト参加時には、まだ圧迫骨折の痛みが残っていて屈むことができず、ベッドからの起き上がりに30分も要する状態でした。第5期の終了時、齊藤さんに1年後どうなっていたいか聞いたところ、「骨折前によく行っていた食料品店で買い物をしたい」と明確な希望が返ってきたのです。そこで目標を「歩行距離を延ばす」こととし、週3回の通いの際、齊藤さんの自宅から事業所まで500メートルほどの距離を職員と一緒に歩くことにしました。そして少しずつ遠回りをしながら歩行距離を延ばしていったのです。次の目標は「自分でコースを決めて歩く」。事業所まで、齊藤さんが自分で歩きたい道を選んで歩いてもらいました。

利⽤者情報

⿑藤美佐⼦さん(85歳)

要介護度4→2

⽇常⽣活動作(ADL)31→26

介護支援専門員 片桐さん

職員は事業所までの歩行支援のほか、下肢筋力を鍛えるためにスクワットや足上げなど座ってできる個別運動の支援を行いました。痛みが強かったときの記憶があるため、歩行や運動に自信がなかった齊藤さん。職員はその気持ちを尊重したうえで、「齊藤さんならできますよ。大丈夫」と背中を押すとともに、活動チェック表にその日行った運動の内容や回数、齊藤さんの様子などを記録して、活動の進捗を職員間で共有しました。また自宅の階段を昇降して洗濯物を干したり、茶碗を洗ったりするなどの生活動作も機能向上につながり、これまでできなかったズボンをはくなどの動作もできるように。地道に訓練を積み重ね、ついに最終目標の「店に行って買い物をする」も見事達成、なじみの店員と会話したことも大きな喜びと自信になりました。
同時に、これまで支援してきた職員への信頼感も増したのです。前年の銅賞を上回る金賞を受賞して、「おかげさまで」と笑顔を見せた齊藤さん。自宅と事業所間は安定した歩行ができており、今後は交通機関を利用するなどして行動範囲を広げていきたいと考えています。

良好な関係がつくれたのは
⼩規模多機能型居宅介護ならでは

齊藤さんが目標を達成できたのは、小規模多機能型居宅介護※ならではの要因があります。私たちは通いのほか訪問も行っているので、齊藤さんの自宅での様子を把握でき、それが齊藤さんのことを深く知ったうえでの支援につながりました。さらに歩行支援で回り道をしたり、自分でルートを決めてもらったりと齊藤さんのペースに合わせた柔軟な対応ができたのも小規模多機能型だからこそです。また私たちは日ごろから地域とのかかわりを大切にしており、コロナ前は地域の方を招いた食事会を開くなどして顔見知りの関係をつくっていました。齊藤さんも、食事会に参加して「ひつじ雲」を知り、介護が必要になったときに「ひつじ雲を利用したい」と言ってくださいました。長くかかわっているので、信頼関係もより強固になったと思います。(介護支援専門員 片桐さん)
※介護度が上がっても在宅での生活が継続できるよう支援する、小規模なサービス施設。通いを中心に訪問や泊まりを組み合わせて、在宅での生活の支援や機能訓練を行う。

段階を踏んで⽬標を設定
⼀つひとつ達成して⾃信に

介護支援専門員は齊藤さんの状態に合わせて、数か月ごとに目標を設定しました。目標の1つめが「歩行距離を延ばす」。自宅から通いの事業所まで500メートルほど歩くのを機能回復の好機ととらえ、職員とともに歩行訓練を行い、少しずつ遠回りして歩行距離を延ばしていきました。次の目標は「自分でコースを決めて歩く」。道路には凸凹があったり、斜めになっていたりと障害となる場所があります。そこを通るのかどうかも齊藤さん自ら決定し、職員は見守りました。そして最終目標となったのが「骨折前によく行った駅ビルの店で買い物をする」。介護支援専門員は店までのルートを下調べしたうえで臨み、2回も店に行くことができました。一つひとつ目標をクリアしたことが自信になり、さらに生活にもハリが出ました。こうして日常動作一つひとつのやる気が増すという好循環が起こったのです。

利⽤者の状況や
ケアの変化

R3.7
第6期プロジェクト参加
要介護4
R3.9
第5期プロジェクトで銅の認証シール受賞
歩⾏、個別機能訓練を継続
R3.10
ベッドから起床して階下に移動するのに、
家族が介助して30分を要する
R3.12
⾞いすを押す歩⾏に慣れる
R4.1
歩⾏距離が延び、歩くコースも
⾃分で決めるように
R4.3
⾃宅で階段昇降して、洗濯物を
⼲したり、⽴って茶碗を洗ったり
するなど
⽇常の⽣活動作を
ひとつずつ増やす
R4.4
要介護2に改善
家族と⼀緒に散歩ができる
R4.5
なじみのお店に歩いて⾏って
買い物ができた。
R4.8
⻑距離歩⾏にも⾃信がつき、
できる動作が増えた
R4.9
⾦の認証シール受賞
R4.10
介助なしで起床できるようになる

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