CASE
事例紹介
左から、加藤敦子さん、佐藤正昭さん、小鯖秀幸さん、大友啓光さん、石渡京子さん、小島唯花さん、岡本悦子さん
「応援してくれるチームと家族にこたえたい」
こまめな声かけが⾏動変容につながる
〜在宅で複数のサービスを活⽤した取組〜
胃切除手術をして一時は施設入所を検討するほどだった佐藤さんは、退院して娘さん家族と暮らす自宅に戻れたことで元気を取り戻し、入院前から通っていた通所リハビリを再開しました。ところが、食形態を普通食に戻すことができたものの残してしまうことが多く、ふらついて転倒することもしばしばありました。佐藤さんは「家族に心配をかけたくない」という思いが強く、不調を改善するためにも「以前のように食事を摂れるようになりたい」と希望していました。介護支援専門員は、佐藤さんが家族と暮らし続けられるよう、通所リハビリと連携して佐藤さんとご家族を支えたいとプロジェクト参加を決めました。
「転倒しない。むせずに食事できる」という目標に向けて、介護支援専門員は佐藤さんの生活習慣を見直す必要があると考えました。佐藤さんは水分を制限したり、食事を急いで摂ったりするために体調が悪くなることが多かったのです。そこで、通所リハビリでは作業療法士が佐藤さんの体調に留意しながら歩行訓練や下肢体幹の筋力強化、ストレッチなどを行うとともに、医師のアドバイスのもと、こまめな水分摂取を呼びかけ、食事の摂り方を注視。通所リハビリでの取り組みはその都度家族に伝え、娘さんも自宅で同じように声かけしました。すると佐藤さんに、周りの応援にこたえたいという気持ちが出てきたのです。
介護支援専門員 加藤さん
介護支援専門員は佐藤さんが生活習慣改善の必要性を自覚できるよう、自主的に「用意してくれた水分を飲む。ゆっくり動く。よく噛んで食べる」を「セルフケア」として実行することを新しい目標にして、佐藤さんにそれを書面で確認してもらいました。本や新聞が好きな佐藤さんには、口頭で伝えるよりも効果があると考えたのです。それが奏功し、セルフケアの必要性を納得した佐藤さんは確実に実践するように。今の生活を維持して、「少しでも長生きしたいね」と言う佐藤さんの穏やかな笑顔が印象的でした。
チームは応援団
本⼈がやりたいことを⽀える
野川ケアプランセンターは、前身の井田居宅介護支援センターのころから、「ご本人がやりたいことをあきらめないで、やり続けることを支えたい」という思いでプロジェクトに継続して参加しています。今回、初めてプロジェクトに参加してくださった通所リハビリからは、「プロジェクトを通して、利用者さま一人ひとりに合った支援をしようという意識がスタッフ全員に浸透しました」という感想をいただき、うれしさと同時に手ごたえを感じました。私もプロジェクトによって、チームの皆さんがいかにその方にアプローチしていくかを学ぶことができており、プロジェクトの意義を体感しています。チームやご家族の応援が佐藤さんのやる気を引き出したように、介護支援専門員=応援団長として、チームがその方を応援し、その方もそれにこたえるという関係をつくっていきたいと考えています。(介護支援専門員 加藤さん)
本⼈の⾃覚を引き出す声かけ
⾃主的ながんばりが改善の要因に
佐藤さんは長年透析を受けていたため水分を制限しないといけないと思い込んでおり、それがこもり熱※や血圧変動の原因にもなっていました。急に立ち上がり、ふらついて転倒することも少なくありません。そこで水分摂取や食事スピード、起き上がり方などに注意するよう自覚してもらうために、通所リハビリの職員やご家族がこまめに声をかけました。すると皆が気にかけていることが伝わり、「心配してくれるから、応援にこたえよう」という意識が生まれたのです。さらに、真面目にものごとに取り組む佐藤さんの性格に合わせて、自発的に実践する「セルフケア」を新しい目標に設定し、書面を佐藤さんに提示。やるべきことを確認し納得できたことが、自ら積極的に取り組む動機になったのです。自身の体調安定が家族に心配をかけないことになるという気付きが、安定してがんばる力になりました。
※こもり熱:身体から熱をうまく放散できないため、体温が上がってしまう状態のこと
利⽤者の状況や
ケアの変化
退院
⾷後の胃部不快がある
通所リハビリ再開、
⾷事形態を常⾷へと戻していく
臥床時のアドバイスなどを⾏う
⾎圧も⾼くふらつきがある
指⽰のもと調整