CASE
事例紹介
左から、冨松令奈さん、前川紗良さん、林玲子さん、小川治子さん
自宅のような環境、無理ない日課の
積み重ねで心身機能を維持
〜認知症対応型共同生活介護(グループホーム)での取組〜
グループホームは疑似家族
その人らしさを重視したケアを提供
入所当初は杖歩行だった小川さんは、まもなく杖なしで歩けるようになり身のまわりのことも自分でできる状態を維持しています。プロジェクト参加時、小川さんには「息子とお寿司を食べに行きたい」という夢がありました。夢をかなえたいと考えたチームは、新しいことをはじめるのではなく、入居時からの取組を継続して、ADLを下げることなく穏やかに暮らしてもらうことを目標にしました。その中心となったのが、 日課のラジオ体操と小川さんが大好きな合唱です。ラジオ体操は15 分かけてしっかり行い、その後懐かしい童謡を皆で合唱します。歌うことで嚥下機能※を衰えさせない狙いもありました。ほかにも手指の運動や口腔体操など、機能維持に良いと思う働きかけは、各職員の裁量に任せて実施しました。その際、小川さんの気分が乗らなければ無理強いせず、家庭的雰囲気の中でストレスなく過ごしてもらうことを優先したのが奏功し、穏やかな表情が保たれています。さらに居室は5段ほどの階段があるため、トイレや食事のたびに階段を昇降することになり、運動機能の維持につながりました。こうして入居以来要介護2を維持し、3年連続銀賞受賞を達成。コロナ禍で目標の外食は難しくなりましたが、入居者全員でお寿司を食べてお祝いしました。
介護職員 林さん
ここで暮らす8人の入居者や職員は疑似家族のようなものです。少人数であるメリットを生かして、お一人おひとりの「性格に合ったケアを提供できるのがグループホームの良さ。普段と変わったことがあれば、すぐに気づくことができます。だから自宅にいるように、その日の気分や体調に合わせて柔軟に対応したいと考えています。情報共有は、ケア会議や日々の申し送りを利用しています。その日行ったケアやレクリエーションを表に記入することで、職員が意識して実践できるとともに、それを別の職員が確認する仕組みが構築されています。小川さんは養護教諭や看護師をされていたこともあり、厳しさと優しさを併せ持った方。小川さんの気持ちをくみ取りながら寄り添い、信頼関係を築くことができたことが、心身の機能が衰えず介護度を維持できた要因だと思っています。(介護職員 林さん)
独自の取組で入居者も
職員もモチベーションが向上
グループ運営会社独自のさまざまな取組がチームの意思統一や情報共有に貢献しています。「息子とお寿司を食べたい」という小川さんの夢は、「夢プラン」という入居者の夢をかなえる取組の中で出てきたもの。夢が実現すると次の夢に更新されるので、常に夢に向かって意欲のある暮らしを送ることができるという仕組みです。さらに、毎年施設ごとに対象者を決めて、ケアの実践と成果を発表する研究大会「バナナ甲子園」が開かれており、職員の研鑽とモチベーション向上につながっています。要介護2を4年間維持している小川さんへの取組もここで発表する予定だそうです。またプロジェクトで3年連続銀賞受賞という快挙を小川さんや職員の励みにしたいと、広報誌「バナナニュース」でも紹介しました。職員や入居者のご家族だけでなく、地域にも配布して広く知らせています。
利⽤者の状況や
ケアの変化
バナナ園生田ヒルズに入居 杖歩行、
険しい表情が多い
表情も和らぐ
参加するように
生活リハビリとして食器洗いをする
DVDを参考にしながら運動を始める